5000年の歴史を持つ石けんは、形状(液体・個体など)、用途、製造方法などによっていろいろな石けんに分類されます。

以下に石けんについての詳細をまとめてみました。

1 石けんの定義

簡単にいうと
  • 油脂とアルカリの化学反応によって作られる (鹸化)
  • 石鹸の「石」は固形物、「鹸」は「あく」とも読み、灰汁(あく) やアルカリを意味する
  • 弱アルカリ性(pH9〜10程度)
  • 水溶性で水によく溶ける
  • 油汚れなどを落としてくれる
  • 頭、顔、身体を洗う他、洗濯、食器洗いなどにも使われます
詳しく

石鹸(石鹼、せっけん、せきけん、英: soap)とは、一般に汚れ落としの洗浄剤を示す言葉。また高級脂肪酸の塩(えん)の総称である。5000年の歴史のある自然の石鹸は抗ウイルス作用が強く、高頻度の手洗いによる肌荒れ予防にも秀れていることが知られている。(wikipedeiaより)


石けんは高級脂肪酸の塩(えん)とありますが、「高級脂肪酸」とは「油脂」に含まれる脂肪酸のことで、高級とは炭素(元素記号:C) の数が多い(一般的にはC8以上)という意味です。


「塩」はアルカリのことで、固形石けんには「水酸化ナトリウム」、液体石けんには「水酸化カリウム」を使用します。


「油脂」は、3つの脂肪酸とグリセリン (三価アルコール) がエステル結合 (酸とアルコールが脱水縮合してできた結合)した「脂肪酸トリグリセリド」です。


炭素数の多い脂肪酸で作った石けんは油に対する洗浄力が強く水に溶けにくく、炭素数が少ない脂肪酸で作った石けんは油に対する洗浄力が弱く水に溶けやすいという特徴があるため、石けんに使用される脂肪酸は「ラウリン酸 (C12)」、「ミリスチン酸 (C14)」、「パルミチン酸 (C16)」、「ステアリン酸 (C18)」、「オレイン酸 (C18:1不飽和)」など炭素数12〜18のものが多いです。

2 形状による分類

固形石けん 手・顔・身体用の固形石けんなど

油脂に水酸化ナトリウム(アルカリ)を混ぜて鹸化して作る
粉石けん 洗濯石けんなど

固形石けんを粉砕して粉状にする
軟石けん1 日本薬局方薬用石けんなど

油脂に水酸化カリウム(アルカリ)を混ぜて鹸化して作る
軟石けん2 シェービングソープなど

油脂に水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを混ぜて鹸化して作る
液体石けん ハンドソープ、ボディソープ、石けんシャンプーなど

軟石けんを水で希釈して作る

3 用途による分類

身体用石けん

浴用石けん、洗顔石けん、ハンドソープ、石けんシャンプーなど(化粧品) 


薬機法 (医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律、旧薬事法律) により規制、安全性が確保されている

JIS規格(化粧品石けん : K3301)

薬用石けん 殺菌消毒用 (医薬部外品、トリクロサン、トリクロカルバン等の殺菌成分を配合)

日本薬局方薬用石けん (医療用洗浄剤、座薬の基材などに使用される)

薬機法 (医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律、旧薬事法律) により規制、安全性が確保されている
住宅用石けん 台所用石けん、洗濯石けん

家庭用品品質表示法に基づいて適正な成分表示をする

■ JIS規格(家庭用合成洗剤試験方法JISアルカリは固形石けんには「水酸化ナトリウム」、液体石けんには「水酸化カリウム」を使用します。 K3362、石けん試験方法:K3304)
雑貨石けん ペット用、輸入石けん、手作り石けん等、上記以外の石けん

4 製造方法による分類

油脂鹸化法
  • 原料油脂にばらつきがあり、品質が不安定になりやすいが、油脂の特徴を活かした個性的な石けんが作れる
  • 昔ながらの石けんのつくり方
  • 手間と時間がかるため大量生産が難しく、小規模メーカーの製造に向いている
脂肪酸中和法
  • 油脂を加水分解して脂肪酸(ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等)とグリセリンに分け、脂肪酸にアルカリを反応させて鹸化することにより、不純物のない安定性が高い石鹸を作ることができる
  • 塩析が不要で油脂鹸化法と比べると手間と時間がかからないため、大量生産が可能な大規模メーカーの製造に向いている
機械練り石けん
  • 油脂鹸化法や脂肪酸中和法によって作られた石鹸素地を練って棒状に押し出した石けんを型打ちして作る製法

5 塩の種類による分類

アルカリ石けん

ナトリウム、カリウムなどのアルカリ塩と反応してできる

  • 狭義ではアルカリ石けんのみが「石けん」とされる
  • 汚れが落ちる
  • 水に溶ける
金属石けん

脂肪酸が水中の金属イオン(カルシウムやマグネシウム)と反応してできる

  • 金属石けん = 脂肪酸カルシウムや脂肪酸マグネシウムなど
  • 金属石けんに皮脂などの汚れがつくと「石けんカス」となり、水に溶けなくなる
  • 硬水は軟水に比べてカルシウムやマグネシウムが多く含まれているため、石けんカスができやすくアルカリ石けんの泡立ちが悪くなる
  • 水に溶けないため、グリースの増調剤など工業的に使われる
  • 金属石けんを防ぐために「金属封鎖剤 (キレート剤)」が使用される
逆性石鹸

塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどの陽イオン界面活性剤
(アルカリ石けん、金属石けんは陰イオン界面活性剤)

  • 殺菌力があるが洗浄力はあまりない
  • 塩化ベンザルコニウムはアレルギー作用のある物質として医薬部外品の標示指定成分となっている
  • 塩化アルキルトリメチルアンモニウムは、PRTR法で有害化学物質の第1種に指定されている

6 石けんの製品表示について

化粧品石けん 化粧品には使用する原料の全成分を配合順に表示する義務があり、化粧品のパッケージには全ての使用原料が記載されています。

化粧品石けんの成分表示方法にはいくつか種類があり、どのように記載してもOKなので、表示を見て「石けん」と分かりにくいこともあるかもしれません。

下記は石けんの原料油脂として米油を使用し、水酸化ナトリウム(Na)で鹸化した場合の表示方法です。

  • 石けんの原料油脂(米油) とアルカリ (水酸化ナトリウム)を総称して 「石ケン素地」 と表示
  • 反応前表示
    a. 高級脂肪酸の種類 + 水酸化ナトリウム
    「オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、水酸化Na」と表示

    b. 油脂の種類 + 水酸化ナトリウム
    「コメヌカ油、水酸化Na」と表示
  • 反応後表示
    a. 高級脂肪酸の種類 + 水酸化ナトリウム (INCI(国際的表示名称)に準ずる表示形式)
    「オレイン酸Na、パルミチン酸Na、ステアリン酸Na、ミリスチン酸Na、パルミトレイン酸Na」と表示

    b. 油脂の種類 + 水酸化ナトリウム
    「コメ脂肪酸Na」と表示
医薬部外品石けん 「石けん用素地」と表示
(化粧品の成分表示名称と医薬部外品の成分表示名称は、同じ成分であっても異なることがあります)
住宅用石けん 「品名」と「成分」を表示

品名: 台所用石けん
成分: 純石けん分(OO%)脂肪酸カリウム
品名: 洗濯石けん
成分: 純石けん分(OO%)脂肪酸ナトリウム
汚れ落ちを良くするため、炭酸塩や重曹などのアルカリ剤が配合される場合もあります

7 環境への影響

石けんは水道水中のカルシウムと結合して水に溶けないカルシウム石けん(脂肪酸カルシウム) になります。
カルシウム石けんは「石けんカス」ともいわれ、洗浄時や洗濯時に石けんカスができると泡立ちが弱くなり洗浄力がなくなるのですが、下水処理場の微生物によって水や二酸化炭素などの無機物に分解されます。食物や洗剤などの有機物が微生物によって無機物に分解されることを生分解といいます。